行政書士の請求書の書き方|領収証は正副二通・5年保存
請求書と領収証は、行政書士にとって扱いが逆です。請求書には法令上の様式の定めがありません。一方、領収証には行政書士法施行規則に定めがあります。
この記事では、請求書に何を書くべきか、領収証に何が義務づけられているかを、条文をそのまま引きながら整理します。
請求書には、法令上の様式の定めがない
行政書士法施行規則を通して確認しましたが、「請求書」について定めた条文はありません。 報酬の掲示(第3条)、書類への記名と職印(第9条第2項)、領収証(第10条)、職印(第11条)はありますが、請求書は出てきません。
つまり請求書の書式は自由です。ただし、インボイス(適格請求書)として交付するなら、記載事項が消費税法で決まっています。
適格請求書の記載事項は6つ(消費税法第57条の4第1項)
適格請求書発行事業者の登録を受けている場合、取引先から求められたときに交付する適格請求書には、次の6項目が必要です。条文が列挙しているものを、そのまま並べます。
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号 二 課税資産の譲渡等を行つた年月日 三 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容 四 課税資産の譲渡等に係る税抜価額(略)又は税込価額(略)を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率 五 消費税額等(略) 六 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
出典:消費税法(昭和六十三年法律第百八号)/e-Gov法令検索
実務に落とすと、次のようになります。
| 条文の項目 | 請求書に書くもの |
|---|---|
| 一 | 事務所名(または氏名)と登録番号(T+13桁) |
| 二 | 取引の年月日。期間でまとめる場合はその期間 |
| 三 | 何の業務か(例:建設業許可 新規申請) |
| 四 | 税率ごとに区分した合計額と、その税率 |
| 五 | 消費税額 |
| 六 | 依頼者の氏名・名称 |
六の「交付を受ける事業者の氏名又は名称」が抜けやすい項目です。宛名の無い請求書は、適格請求書の要件を満たしません。
なお、同条第4項は、記載事項に誤りがあったときは修正した適格請求書を交付しなければならないと定めています。出し直しが必要という点も条文にあります。
領収証には条文の定めがある(施行規則第10条)
こちらは請求書と違い、明確に義務づけられています。
(領収証) 第十条 行政書士は、依頼人から報酬を受けたときは、日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し、副本は、作成の日から五年間保存しなければならない。
出典:行政書士法施行規則(昭和二十六年総理府令第五号)/e-Gov法令検索
この一文に、4つの義務が入っています。
- 連合会の定める様式によること
- 正副二通を作成すること
- 正本には記名し職印を押して交付すること
- 副本を作成の日から5年間保存すること
「領収証を1通だけ渡して終わり」は、条文の求めるところと違います。また、押すのは職印です。職印そのものは第11条が「日本行政書士会連合会の会則の定めるところにより」定めるとしています。
保存期間が、事件簿と違う
ここは取り違えやすい点です。
| 対象 | 期間 | 起算点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 事件簿(帳簿)と関係書類 | 2年間 | 帳簿閉鎖の時 | 行政書士法 第9条第2項 |
| 領収証の副本 | 5年間 | 作成の日 | 施行規則 第10条 |
年数も起算点も違います。 領収証の副本は作成日から5年なので、事件簿の2年に合わせて処分すると足りません。事件簿側の考え方は行政書士の事件簿とは?記載事項・様式・保存期間・書き方にまとめています。
報酬と立替金は分けて書く
登録免許税、証紙代、交通費などを立て替えることがあります。これらは報酬とは別に書きます。
理由は、行政書士法第9条第1項が事件簿の記載事項として「受けた報酬の額」を挙げているためです。立替金を含んだ総額しか残っていないと、報酬の額が事件簿に正しく書けません。請求書の段階で分けておけば、そのまま事件簿に写せます。
領収証に印紙は必要か
印紙税法の別表第一第十七号は、金銭の受取書について、非課税となるものを2つ挙げています。
- 記載された受取金額が5万円未満の受取書
- 営業に関しない受取書
出典:印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)/e-Gov法令検索
報酬が5万円未満であれば、1により非課税です。 ここは条文だけで判断できます。
2については、国税庁の印紙税法基本通達が、行政書士を名指しで挙げています。
(弁護士等の作成する受取書) 26 弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱う。
行政書士が業務上作成する領収証は、金額が5万円以上でも収入印紙は不要です。
⚠️ この通達が挙げているのは資格者本人です。行政書士法人が作成する受取書については、この通達に記載がありません。 法人で5万円以上の領収証を作る場合の扱いは、所轄の税務署にご確認ください。
出典:印紙税法基本通達 別表第一 第16号〜第17号文書/国税庁
源泉徴収の欄について
「源泉徴収額」の欄を請求書に設けるべきかは、別の論点です。行政書士の報酬は、所得税法が列挙する源泉徴収の対象に含まれていません。 根拠と例外は行政書士の報酬に源泉徴収が不要なのはなぜ?条文で確認にまとめています。
まとめ
- 請求書に法令上の様式の定めはない。 施行規則に請求書の条文は無い
- ただしインボイスとして出すなら、消費税法第57条の4第1項の6項目が必要。特に依頼者の氏名・名称が抜けやすい
- 領収証には定めがある(施行規則第10条)。連合会の様式・正副二通・正本に記名と職印・副本を5年間保存
- 保存期間は事件簿と違う。 事件簿は帳簿閉鎖から2年、領収証の副本は作成日から5年
- 報酬と立替金は分ける。 法第9条第1項が「受けた報酬の額」を求めているため
- 印紙は不要。行政書士が業務上作成する受取書は、印紙税法基本通達で「営業に関しない受取書」とされている(行政書士法人は通達に記載なし)
本記事の確認状況
参照した条文
| 内容 | 条文 |
|---|---|
| 適格請求書の記載事項 | 消費税法 第57条の4第1項第1号〜第6号 |
| 記載事項に誤りがあった場合 | 消費税法 第57条の4第4項 |
| 領収証の様式・正副二通・記名と職印・5年保存 | 行政書士法施行規則 第10条 |
| 職印 | 行政書士法施行規則 第11条 |
| 作成した書類への記名と職印 | 行政書士法施行規則 第9条第2項 |
| 報酬の額の掲示 | 行政書士法施行規則 第3条第1項 |
| 事件簿の記載事項(受けた報酬の額) | 行政書士法 第9条第1項 |
| 事件簿と関係書類の保存期間 | 行政書士法 第9条第2項 |
| 受取書の非課税(5万円未満・営業に関しないもの) | 印紙税法 別表第一 第十七号 |
| 行政書士の受取書は営業に関しない | 印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書の26 |
確認先
- 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)/e-Gov法令検索(2026年9月10日確認)
- 行政書士法施行規則(昭和二十六年総理府令第五号)/e-Gov法令検索(2026年9月10日確認)
- 行政書士法(昭和二十六年法律第四号)/e-Gov法令検索(2026年9月10日確認)
- 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)/e-Gov法令検索(2026年9月10日確認)
- 印紙税法基本通達 別表第一 第16号〜第17号文書/国税庁(2026年9月17日確認)
確認できなかったこと
- ⚠️ 行政書士法人が作成する受取書の扱い。 印紙税法基本通達(第17号文書の26)が挙げているのは資格者本人で、法人については記載がありません。
行政書士の業務が印紙税法上の「営業」に当たるかどうか→ 2026年9月17日、印紙税法基本通達 別表第一 第17号文書の26 で「営業に関しない受取書として取り扱う」と確認し、本文を訂正しました。- 日本行政書士会連合会が定める領収証の様式そのもの。 施行規則第10条が「連合会の定める様式により」としていますが、様式の内容を公開情報で確認できませんでした。所属の行政書士会にご確認ください。
- 職印の寸法・書体。 第11条が「連合会の会則の定めるところにより」と委ねており、会則本文を公開情報で確認できなかったため、数値を書いていません。
- 立替金の消費税法上の取扱い。 報酬と分けて書くべき根拠は行政書士法第9条第1項から示しましたが、消費税の課税・不課税の判定については一次情報に当たれていないため触れていません。
監修について
この記事は行政書士有資格者の監修を受けていません。条文と国税庁の公開情報に当たって書いていますが、実務上の判断や個別の事案への当てはめは確認されていません。税務の取扱いについては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
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