行政書士の開業に必要なもの一覧【条文で確認・開業費用つき】
開業の準備でそろえるものは、「法律で備えることが決まっているもの」と「あると仕事が速くなるもの」に分かれます。前者は選択の余地がありません。この記事では前者を条文で確認したうえで、それぞれをいくらで用意できるかを整理します。
法律が「備えなければならない」と定めているもの
行政書士法と行政書士法施行規則が、明文で求めているものは次の5つです。
1. 事務所の表札
(事務所の表示) 第二条の十四 行政書士は、その事務所に行政書士の事務所であることを明らかにした表札を掲示しなければならない。 2 行政書士は、法第十四条の規定により業務の停止の処分を受けたときは、その停止期間中は、前項の表札を撤去しておかなければならない。
(行政書士法施行規則第2条の14)
「掲示しなければならない」であって、任意ではありません。様式は条文に定めがなく、所属会が形式を示している場合があります。
2. 職印
(職印) 第十一条 行政書士は、日本行政書士会連合会の会則の定めるところにより、業務上使用する職印を定めなければならない。
(行政書士法施行規則第11条)
そして、作成した書類には職印を押すことが別に定められています。
(書類等の作成) 第九条 行政書士は、法令又は依頼の趣旨に反する書類を作成してはならない。 2 行政書士は、作成した書類に記名して職印を押さなければならない。
(行政書士法施行規則第9条第2項)
職印の寸法や書体は、日本行政書士会連合会の会則の定めるところによると条文が委ねています。発注前に所属会の案内を確認してください。
3. 領収証
(領収証) 第十条 行政書士は、依頼人から報酬を受けたときは、日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し、副本は、作成の日から五年間保存しなければならない。
(行政書士法施行規則第10条)
見落とされやすい点が3つあります。
- 正副2通を作ること
- 正本には記名し職印を押すこと
- 副本を5年間保存すること(事件簿の2年間とは別の期間です)
市販の領収証綴りをそのまま使う前に、日本行政書士会連合会の定める様式に合っているかを確認してください。
4. 報酬額の掲示
(報酬の額の掲示等) 第十条の二 行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。
(行政書士法第10条の2第1項)
掲示の方法は施行規則が定めています。
(報酬) 第三条 法第十条の二第一項(法第十三条の十七において準用する場合を含む。)の規定による報酬の額の掲示は、日本行政書士会連合会の定める様式に準じた表により行うものとする。
(行政書士法施行規則第3条第1項)
自由な書式ではなく、連合会の定める様式に準じた表である必要があります。
5. 帳簿(事件簿)
(帳簿の備付及び保存) 第九条 行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載しなければならない。 2 行政書士は、前項の帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から二年間保存しなければならない。行政書士でなくなつたときも、また同様とする。
(行政書士法第9条)
記載事項と保存期間の詳細は行政書士の事件簿とは?記載事項・保存期間・書き方を条文に沿って解説にまとめています。
補助者を置くなら届出
(補助者) 第五条 行政書士は、その事務に関して補助者を置くことができる。 2 行政書士は、前項の補助者を置いたとき又は前項の補助者に異動があつたときは、遅滞なく、その者の住所及び氏名を行政書士会に届け出なければならない。補助者を置かなくなつたときも、また同様とする。
(行政書士法施行規則第5条)
一人事務所なら関係ありませんが、家族に手伝ってもらう場合も補助者にあたり得ます。届出が要る点に注意してください。
開業費用の内訳(登録免許税・入会金)
金額が公表されていて確認できるのは、次の2つです。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円 | 登録免許税法 別表第一(三十二)(二) |
| 日本行政書士会連合会の登録手数料(新規) | 25,000円 | 日本行政書士会連合会 会則第47条第1項 |
登録免許税は条文に「登録件数一件につき三万円」と定められています。連合会の手数料は連合会が公表している一覧の金額です。
**入会金と会費は、都道府県の行政書士会ごとに異なります。**金額を公表している会もありますが、全国一律ではないため、この記事では金額を書きません。詳細は所属の行政書士会にご確認ください。
費用別の用意のしかた
上の5つを、かける費用ごとに並べると次のようになります。金額は用意の仕方によって変わるため、ここでは方法だけを示します。
表札
- 手書き・自作のプレート
- 表札の製作業者に発注
条文は「行政書士の事務所であることを明らかにした表札」としか定めていません。素材や大きさの指定は条文にありません。
職印
- 既製品の角印
- 彫刻を依頼
寸法・書体は連合会の会則によるため、発注前に所属会の案内を確認してください。ここを確認せずに作り直しになる例があります。
領収証
- 連合会の様式に沿った複写式の綴りを購入
- 様式に沿った形で自分で印刷
いずれにしても、正副2通・正本への記名と職印・副本の5年保存を満たす必要があります。
報酬額の掲示
- 連合会の様式に準じた表を印刷して掲示
様式が定められているので、自作のデザインで代えることはできません。
事件簿
- 紙の帳簿
- Excel などの表計算ソフト
- 業務管理のソフト
条文は様式を定めていません。法定の項目(事件の名称・年月日・受けた報酬の額・依頼者の住所氏名)が漏れず、帳簿閉鎖から2年間取り出せる形であれば、どれでも構いません。
そろえなくてよいもの
開業の案内でよく挙がるもののうち、行政書士法・同施行規則に備え付けの定めがないものもあります。
- 会計ソフト
- 顧客管理のソフト
- 事務所のホームページ
- 名刺
これらは業務の都合で選ぶものであって、法律上の義務ではありません。義務があるものとないものを分けておくと、開業直後の出費を絞れます。
本記事の法的根拠の確認状況
参照した条文
| 内容 | 条文 |
|---|---|
| 事務所の表札 | 行政書士法施行規則 第2条の14第1項・第2項 |
| 職印 | 行政書士法施行規則 第11条 |
| 書類への記名・職印 | 行政書士法施行規則 第9条第2項 |
| 領収証(正副2通・5年保存) | 行政書士法施行規則 第10条 |
| 報酬額の掲示 | 行政書士法 第10条の2第1項 |
| 報酬額の掲示の様式 | 行政書士法施行規則 第3条第1項 |
| 補助者の届出 | 行政書士法施行規則 第5条第2項 |
| 帳簿の備付け・保存 | 行政書士法 第9条第1項・第2項 |
| 登録免許税 30,000円 | 登録免許税法 別表第一(三十二)(二) |
確認先
- 行政書士法(昭和二十六年法律第四号)/e-Gov法令検索
- 行政書士法施行規則(昭和二十六年総理府令第五号)/e-Gov法令検索
- 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)/e-Gov法令検索
- 各種手数料について/日本行政書士会連合会
確認できなかったこと
- 入会金・会費の金額。 都道府県の行政書士会ごとに異なり、全国の金額を一次情報で確認できなかったため、金額を書いていません。
- 職印の具体的な寸法・書体。 条文が「日本行政書士会連合会の会則の定めるところにより」と委ねており、会則本文を公開情報で確認できなかったため、数値を書いていません。
- 領収証と報酬額の掲示の様式そのもの。 どちらも「連合会の定める様式」と条文にありますが、様式自体を公開情報で確認できなかったため、様式の内容には触れていません。
- 表札の具体的な規格。 条文に定めがなく、所属会が別に示している可能性がありますが、確認できていません。
これらはいずれも、所属の行政書士会にご確認ください。
監修について
この記事は行政書士有資格者の監修を受けていません。条文と日本行政書士会連合会の公開情報に当たって書いていますが、実務上の判断や個別の事案への当てはめは確認されていません。
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